宿

aikawazoe2009-10-16



大学生だった頃、ちょうど今ぐらいの時期には、友達と2人でアジア方面へ旅に出ていました。

もちろん貧乏学生なので、往復の格安航空券だけを買って、バックパックに荷物を詰めて、とりあえず現地へ。

まず、向かうのはタイのバンコク

バンコクで体を慣らした後、カンボジア、インドなどの他国をまわり、またバンコクに戻って、のんびりしてから日本へ帰国する。

というのが、私たちの旅のパターンとなっていました。


宿はもちろん安宿。

転々と泊まり歩く中、この時は安宿街から少し離れた、お寺の裏の宿にたどり着いたのでした。


Cゲストハウス。入り口でミラーボールがぐるぐる。

中をそーっと覗くと、髪の毛をぺたーっとさせて、金の指輪と金のネックレスをジャラジャラ付けて、

全身白い服を着た若い男性が、こちらをじーっと見ていました。


「サワディカ〜。あのー、部屋、空いてますか?」

「うん。空いてるわよーん。中見てみるぅ?」


あ!この人、オカマさんだ! ま、タイだからね。宿に1人くらいは居るか。


「はぁーい。こちらぁーー。」

腰くねくね歩きで案内された部屋は、安い割に掃除が行き届いていて、ベッドも良い感じ。

この宿に即決したのでした。



次の日の朝。

朝ご飯を調達しに行こうと部屋を出ると、背後から

「グッモォニィ〜〜ン♡」 

昨日は見なかったお兄さんが、腰くねくねお掃除。頭にはピンクのパッチン留め。

あ、この人もオカマさんだ。


階段を下りると、

「グッモーーーニーーン!」

今度は、小学生ぐらいのちびっ子が、テキパキお掃除。


玄関をでると、

「グッモォニィ〜〜ン♡」

あら。また、オカマさんだ。


実はこの宿、オカマのお兄さん達と、小学生の男の子達しか働いていない宿だったのです。



宿の通路は、ちょっとしたレストランになっていて、

昼下がりには、小学生の男の子とオカマさんが、チラシの裏に仲良くお絵描きをしていたり、

夜には、ぐるぐる回るミラーボールの下で、みんなでキャーっといいながら踊っていたり。

みんな、かわいくて、無邪気で、とにかく笑顔が素敵で。。。


そして、当然彼らは男性が好きなので、私たちには興味が全くなく、放っとかれ放題。

それがまた、こちらとしては好都合だったということもあって、以来ここは私たちの常宿になったのでした。


今まで、いろんな国のいろんな宿に泊まりましたが、

ここ以上に、「自然に」癒される宿は、私の中ではないような気がします。


私にとって、ここは間違いなく世界一安くて癒される宿です。